エンブリヲ

信用することなく

何か足りない 自分

存在することなく

何か足りない 手足

 


記憶は再生することなく

がらんどうの箱庭から弔う

 


空腹を満たせない 茫乎たる心は

未成熟な命を食べ残した

 


生半可でした 失敗作でした

本当にすみませんでした

 


蚕はいずれ消えていく

うつくしい繭を残して

 

色褪せる程 記憶を使い古した

 

命、搭載《詩集》

まっさらな分娩室にて わたしは偶然ヒトに生まれた

それから誰かの言う通りに 規則正しい生活習慣を全うした


朝昼夜に食事をして その分の排泄をした

朝日が昇る頃に起床して 夕日が沈む頃に就寝した


均しい呼吸をして飽きもせず 同じような日々を繰り返す

均しい呼吸をして懲りもせず 同じような日々を繰り返す


いつだっただろうか? ”なにもない”と呟いたのは

命、搭載

効率よく行動した 
ヒトらしい機械のように
平然と処世を繰り返す
無慈悲な省略と消去

引き換えてしまった 
使い捨ててしまった

何も無いとだけ呟いた 無能
食事と排泄と睡眠した 肢体

偶然ヒトに生まれる 
同じ日々を繰り返す イノチで
飽きもせず 懲りもせず 
均し呼吸を繰り返す それだけ

何も無いとだけ気付いた 無能
食事と排泄と睡眠した 肢体

偶然ヒトに生まれる
同じ日々を繰り返す イノチで
飽きもせず 懲りもせず
均し呼吸を繰り返す それでも